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「冬の朝」

F1000266

卒業間近のある冬の日。同級生の女の子と、高校に大学入試の書類を取りに行く約束をした。
その日、遅刻ぎりぎりの時間に起きた僕は、家を出て愕然とした。
外は大雪だった。
自転車で向かうことにしたのだが、力いっぱいペダルをこいでもスリップするばかりだった。
断念してバスに乗り換えた。
しかし道路は大渋滞で歩いたほうが早いくらいの速度でバスは進んだ。
まだ携帯もない頃で、連絡も取れず、ただどうしようどうしようとそればかり考えていた。
到着したのは約束の一時間半後だった。
バスを降り、泣きそうになりながら走った。
彼女は校門前に透き通るような白い顔で立っていた。
何度も謝る僕を、彼女はあまり責めず、あまり目も合わせず歩き出した。
用事が済んだあと、お詫びに温かいものでもおごらせてと言うと
「冷えちゃったから」とすぐに帰った。
暫くしてなんとなく疎遠になり、告白できずに終わった。
早く起きるようになった冬の朝に、時々思い出す。

ひと回り小さな服を着たように背すじを伸ばしている冬が好き

*

(初出:枡野浩一短歌塾【第二期】最後の宿題)


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