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「ロクニン デ イッショ♪」第5回“公務”編(ゴニン デ イッシュ)

★☆★親友とふたりで買った宝くじどっちもはずれてくれますように (岡本雅哉)―“単語帳みたいな短歌集”「Schoolgirl Trips」より抜粋★☆★作品の詳細については(→コチラ)★

とれたてを絞るといえば……

バレンシアオレンジ?

実は原産地はスペインのバレンシア地方ではなく、
ポルトガル生まれ、フロリダ育ちらしい。
(出典:みかんとその仲間たち/バレンシアオレンジ@農林水産技術情報協会)


とまあ、意味のないトリビアのオープニングで久々の記事になりすみません。


石川美南さんの好企画に便乗しての本企画、後戻りのできない第5回を迎えました。好球必打の精神でがんばります。先頭バッターは、ライト岡本くん。背番号、なし。ホームランを狙って空振りしないよう、バットを短く持ちつつ内野と内野の間を抜けるヒットを打っていけたらと思います。よろしくお願いしまっていこうー!オー貞治! 


……と元気だしてみましたが。

今回の「ゴニン デ イッシュ」は、笹井宏之さんの歌が採り上げられています。
彼が亡くなって、あっという間にもう一年ですね……。


「ゴニン デ イッシュ」第5回は『「歌壇」2009年2月号』より、
歌人・笹井宏之さんの、

とれたての公務員からしぼりとる
真冬の星の匂いの公務

がテーマです。


それでは、僕の鑑賞から。
(いつもどおり、他の方のものを読む前に鑑賞しました)


★ロクニン デ イッショ♪★

【第5回(公務)】 岡本雅哉――彼だけの公務


とれたての公務員からしぼりとる
真冬の星の匂いの公務
(笹井宏之)

*

“とれたて”、“しぼりとる”、“匂い”は柑橘類の印象を受ける。
みずみずしいイメージ。

ところが、“しぼりとる”は、また公務員のとなりに置かれると、「血税を搾り取る」立場としての雰囲気も漂わせる。

しかし、この場合“しぼりとる”のは作者のほうだ。
何を“しぼりとる”のか、といえば“真冬の星の匂いの公務”である。
作者はそれを我がものとする。

goo国語辞書(出典は三省堂「大辞林」)によれば、
“公務”とは

おおやけの仕事。国家や公共団体の仕事。

とある。

この場合、作者が“公務員”からしぼりとった“公務”は、「おおやけの仕事」の意味であろうと思う。
「おおやけの仕事」、すなわち「ほかの人のためになる仕事」である。

作者の代表歌が思い浮かぶ。

・この森で軍手を売って暮らしたい まちがえて図書館を建てたい

“軍手”を使って、何かしらの作業をしたい、とか、“図書館”に好きな本を揃えたい、と詠うわけではない。
“軍手”を、あるいは“図書館”を使うのはあくまで作者ではない。あくまで作者は「みんなのための仕事」をして生きていたいのだろう。

しかし、現実的には軍手だけを売って暮らすのは不可能である。図書館は立たないことも。
そのことは作者は知っている。あえて“まちがえて”図書館を建てたいと詠っているのは、まちがっても建たないことを強調しているかのように思える。しかし、それは不可能から可能になる。短歌を詠むことによって。
この歌は、いわば「みんなのために短歌を詠んでいく」作者の宣言である。

次に“星”、“冬”というキーワードから思い浮かぶ歌を挙げてみる。

・水びたしの灰色猫が現れて流星の尾に噛みつくところ
・表面に〈さとなか歯科〉と刻まれて水星軌道を漂うやかん
・南極のとけなくなった雪たちへ捧ぐトロイメライの連弾
・水田を歩む クリアファイルから散った真冬の譜面を追って

これら、“真冬の星の匂い”を感じさせる歌を読むと、作者が“公務員”からしぼりとった“公務“、すなわち「ほかの人のためになる仕事」とはまさしく短歌を詠むことなのだという思いがますます強くなる。

“真冬の星”は美しい。厳しい寒さの中に見つめるゆえに、周りの闇から孤高であるゆえに。
作者がこの世を去った今、残された僕らは彼の遺した“公務”から“真冬の星の匂い”を嗅ぎとろうとしてばかりいる。
鼻がつん、としてばかりいる。

岡本雅哉(おかもと・まさや)
東京都生まれ。32歳、枡野浩一の「かんたん短歌blog」をきっかけに作歌を始める。
主に「かんたん短歌blog」、「笹短歌ドットコム」、「かとちえの短歌教室シリーズ」等に投稿。
2008年5月、「エレクトロ・ワールド編」にて、Perfumeの楽曲の歌詞の一節を使って行う“Perfume”で付け句!企画を開始する。
2009年9月、題詠blog2008の出詠をもとに自主制作した単語帳風短歌集『Schoolgirl Trips』を販売。
枡野浩一短歌塾第一期生。

……お粗末さまでした。


さて、オリジナルの「ゴニン デ イッシュ」、またもや今をときめく現代歌人の面々が……銀河系軍団ってやつか。


それぞれの“鑑賞の印象”を。

今橋愛さん――真冬の星の匂いを、作者とならんでかいでいる女子
島なおみさん――やわらかさと固さの対比、なるほど
高柳克弘さん――僕らも傷を負う存在なのかもしれない
山田航さん――詩語と非詩語にはじまって、納得
吉川宏志さん――「公私の関係」と見るがゆえの厳しさかと

この記事をごらんになって、はたして「ゴニン デ イッシュ」とはなんぞや、と思った方は、ぜひとも実際の鑑賞文(→コチラ)をご覧くださいね。


今回の「ゴニン デ イッシュ」で取り上げられた笹井宏之さんのただひとつの短歌集、「ひとさらい」のご購入は、歌葉のホームページからどうぞ(→コチラ)。

併せて、題詠blog2007の出走記録「温帯空虚」、笹短歌ドットコムの「笹井宏之ポエジー図鑑」もどうぞ。

僕個人としては、「枡野浩一のかんたん短歌blog」における、枡野浩一さんとのやりとりが、そばにいて見守っていたものとして、いちばん心に残っています。
(URL:http://masuno-tanka.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/2008222_77cf.html


それではまた♪

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コメント

こんばんは。岡本さん

 とても興味深い一首でした。
とれたての公務員からしぼりとる真冬の星の匂いの公務

「真冬の星」から私が連想するのは、済んだ冬の空気の澄んだ星であることです。
とれたての公務員は、公務員試験に晴れて合格した「公務」を自分の職とすることを希望した人達であろうと思うこと。
純粋に民のために尽力を尽くそうとしている人からしぼりとる何か。と思いました。
「純粋」であるからこそ搾り取られるように奪われてゆくもの。
作者ひとりが搾り取るのではなく、ある意味「民」が。「政治が」。かも知れないけれど、その中の作者はひとりかも知れない。
そんな風に読みました。

なんて語ってどうする^^
一首の独立した歌として読むには、少し材料が足りない気もしたりしましたが、連作の中の一首として読みたい気がしました。


投稿: 西野明日香 | 2010年3月25日 (木) 21時08分

西野さん、おはようございます!

マジレス、ありがとうございます。大変うれしいです。タイトル「シチニン デ イッソ!」に変えなきゃいけないかと思ったくらいです(笑)。

公務員の内面に迫った読みですね、西野さんのは。
“とれたて=なりたて”ねー。そういう読み方もできるんですね、たしかにフレッシュですもんね。

この歌を単独で採り上げた場合、確かに作者の意図するものっていうのは見えにくいかもしれません。というより、笹井さんの短歌にはとりたてて何かを喩えるというところがないので、結局つかみどころがない気もします。読み手により、いかに読まれるかという観点からみると、この歌は色んな解釈ができるという点で、ナイスセレクションだと思います。

投稿: 岡本雅哉 | 2010年3月26日 (金) 09時59分

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