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ショートストーリー・ショートソング Vol.2(collaboration with Natsuto Itoh)

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さて、このたび「かとちえの短歌ストーリー」が最終回を迎えました。そして、感動のアンコール企画「かとちえの短歌色物語」が2月25日、テーマ[白磁]のアップとなります。


それを記念しまして、かつて僕が「かとちえの短歌物語」と伊藤夏人さんが「かとちえの短歌ストーリー」に投稿した短歌をモチーフにショートストーリーを書きましたので、よかったらご覧ください。


※なお、この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件などには僕の脳内で以外いっさい関係ありません。

<なにもない二人>

深夜、玄関のチャイムが鳴った。時計は22:00を少し過ぎたころだ。
ろくに確認もせずにカギを解除してドアを開けた。

「こんばんは~」

ユカがいつもと同じく慣れた手つきでブーツを立ったまま脱ぐ。そのとき、アヤノのパンプスに脚を下ろしたのは故意なのかどうかわからない。ユカがダイニングに行ったのを確認したあとで、玄関にかがんでパンプスのへこみを直した。いつからだろう、ユカと僕がこうなったのは……


アヤノは大学のサークルで同期だった。ショートカットで活発な雰囲気で同姓からもよく好かれていた彼女と親しくなるのに時間はかからなかった。いつも天然なボケ役として話題の中心にいた彼女は、時折りふっと淋しそうな表情を見せことがあった。

「時々ね、まわりのイメージに自分をあわせるのが苦痛になるんだ……」

芝生に体育すわりをしてつぶやくアヤノの姿はおそらく僕しか知らない。“自分だけしか知らない”姿を見せてくれる、そんな女の子に弱いのは僕もいっしょだった。急速に近づいた僕らの仲は、大学卒業後には結婚という形をとることになった。ただ、アヤノには僕の知らない世界があった。

結婚して半年後、アヤノは毎週熱心にラジオを聴くようになり、短歌の投稿をするようになった。アヤノは意外に筋がよいみたいで、よく番組に採り上げられて喜んでいた。そんなアヤノの姿を見るのは淋しいようでもあり、嬉しくもあった。その頃から、それまで僕の趣味に合わせてふたりで行っていたアーティストのコンサートにも、短歌関係の集まりがあるとかいう理由で来ないことが度々だった。朝早くでかけていくアヤノをベッドから見送り、遅めに起きてシャワーを浴びて夕方からのコンサートに行くことが週末の習慣となった。

短歌関係のブログを立ち上げたアヤノは、オンライン・オフライン問わず交友関係を広げていき、家にいてもパソコンの前に座ることや、ケータイでメールを送ることが多くなった。僕はといえば、元来の人付き合いの悪さからか、特に旧友と会うこともなく、交友関係が広がることもなかった。

そんな僕の姿を見て罪悪感を感じたのか、アヤノはある日家に高校時代からの友人を呼んだ。それがユカとの出会いだった。ちょっと人見知りするアヤノにくらべて、ユカはちょっと生意気なぐらいなれなれしかった。初対面と思えないくらいの毒舌もたびたび披露したが、その物言いを心地よく感じている僕がそこにはいた。

「あなたの好きなアーティスト、ユカも大好きなんだって!今度ふたりで行ってきたら?」

そういうアヤノの目は輝いていて、短歌に没頭するあまりおざなりにしている僕に仲間を紹介できた喜びで一杯に見えた。それから僕とユカは、休日の夜はよく一緒にコンサートに行くようになった。次第に、コンサートのない夜にお酒を飲むことも多くなり、そのうち男女の関係になっていた。アヤノが遅くなるときには、僕ら夫婦のマンションで夜を過ごすことも度々あった。


「シャワー借りたよ」

そういってバスルームから出てくるユカは、アヤノのバスローブを身につけていた。アヤノが、肌触りがいいね、といってFrancFrancで一目ぼれして買ったオフホワイトのバスローブ。それを借りたことにはユカは一言も触れない。


先週、アヤノからユカにお願いがあったらしい。

「お願い、どうしてもカレにはだまっていて欲しいんだけど……地方で短歌の大会があるの。でも、そこまで短歌にのめり込むのか、って思われちゃうのもね、イヤなんだ……」


それでさ、ユカと一緒に旅行に行った事にしておいて、っていうのよ。そういってユカは髪を乾かすために洗面所に向かった。


アヤノって、いつもマジメなんだよね。今は短歌でがんばってるけど、高校のときもマジメにダンス部のリーダーなんてやっちゃって、悩みながらも結果出しちゃうんだよね……
そんなアヤノをずっーと見ていると、なぜなんだろうね、イライラしてくるの。今日私たちがこうしているのだって、きっとあの子は気づかないでしょうね。でも、アヤノはちゃんと自分のするべきことがわかってるの。
でも、私には何もないの……ううん、私だけじゃないね、あなたにもね……

その言葉が出るか出ないかのうちに、ユカの唇をそっとふさぐ。
そんなことはわかっている。けれど今は目の前のユカの魅力に抗えない無力な僕がいるだけだ。
明日の晩、アヤノが帰ってくれば、今までどおりやればいいことだ。そうだ、それだけだ。


密室の男女に何も起こらない謎がもうすぐ成立します (伊藤夏人)

友だちと旅行で妻は留守ですがその友だちが家に来ました (岡本雅哉)

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コメント

こんばんは。ハッピーバレンタイン。
ショートストーリー、おもしろかったです。
でも怖かった・・・オトナになんかなりたくないのにw

投稿: こゆり | 2009年2月14日 (土) 22時29分

大人って・・・!

未だ恋に恋する21歳です。夢見てたいです。
でも短歌とストーリーが合ってておもしろかったです。

昨日はバレンタインだったことだしチョコレイト・ディスコを聴いてピュアな気持ちを取り戻したいです。

投稿: めぐみ | 2009年2月15日 (日) 17時10分

岡本さんこんばんは。

無言のエールありがとうございました。
お陰さまですっかり体調も良くなりました。
やっぱり僕らはキモ友ですね(笑)

投稿: 伊藤夏人 | 2009年2月15日 (日) 21時10分

ショートストーリー
面白かったです。
でも大人め……!
あたしも大人だけど
ガキだから、
こわいよー(>_<)
創作だから浮かんでくると……
思いたいっ!

投稿: ともこ | 2009年2月16日 (月) 02時23分

こゆりさん、おはようございます!

たまには“怖い”のもいいでしょ(笑)
怖かったのは、ユカの小悪魔っぷり?それともアヤノの鈍感さ?

でも、オトナがみんなこうってわけじゃないからだいじょうぶだよ!

めぐみさん、おはようございます!

現実を見るんだっ!っていうか、目の前にあるものを大事にね、って自戒も込めて書きました(笑)

コメントにはないけれど、短歌詠む方から“他人ごとと思えなかった”って意見が複数ありました……

チョコレイト・ディスコ!の世界はいいよね~♪期待してる男の子♪

夏人さん、おはようございます!

思えば、夏人さんが“僕の短歌にストーリー付けて”って言ってくれなければこのお話は生まれていなかったんです。僕こそ感謝しています。

ちなみに、ユカは付け句!で夏人さんに賞をくれたぱっつん前髪のあの娘がイメージキャラですから(笑)

ともこさん、おはようございます!

この話、女性陣のリアクション良すぎですね(笑)

上記のごとく、夏人さんの短歌ありきで始まったこのお話なんで安心してください!

ほぼ僕の妄想の産物、ですが。ちょっぴり実体験で“気をつけなきゃ”って思ったことをミックスしてます(だからそれが怖いんだって)

投稿: 岡本雅哉 | 2009年2月16日 (月) 10時10分

面白かったです、しょーとすとーりー!!(ひらがななきぶん)
二首を組み合わせるコラボもすてきですね★

てか、「何も起こらない謎」って。。?!
ものすごい起こってるじゃないですか!笑
でも奥さんにとっては、何も起こってないのですものね。まー、ユカは、よくアヤノと友達やってけるなーと思います。

あと。
岡本さんが「アーティスト」とか「コンサート」だとか言うと、それはもうperfumeがどうしても浮かんでしまうんで、そこに少しうけました。笑

投稿: 安藤えいみ | 2009年2月17日 (火) 03時13分

安藤さん、こんにちは!

卒論終わってよかったね、お帰りなさい……

そう、「何も起こらない」。
なんたって、ユカはアヤノと旅行中なんだから……

そうですか、安藤さんは、ユカ目線ですか!
ある意味アヤノはユカを友人として信頼しているのか、それとも軽んじているのか……安藤さんは後者の見方なんじゃないかな?
“亭主と二人きりにする”って、ある意味無神経だよね……。

「アーティスト」はもちろん!!

投稿: 岡本雅哉 | 2009年2月17日 (火) 17時28分

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